2023/06/25
6/25巻頭言「光の中の闇、闇の中の光」
88人。昨夜(2023年6月24日)の小倉の炊き出し会場に並んだ人数に現場は驚いた。一年前は60人に満たなかった。一年で1.5倍となり、ここ数年で最悪の数となった。半数以上は野宿者ではなく地域に暮らす方々だと思われる。食事や薬、衣服を求めて並ぶ人々は、物価高騰に対する政府の給付金の説明に聞き入っていた。
コロナが一段落を迎えた感があり、町の人出は回復しつつある。株価はバブル崩壊後の最高値となったという。空き家が多い北九州市だが、あちこちでマンション建築が進む。景気が回復している様子がうかがえる。だが、その一方で取り残された人々が炊き出しに並ぶ。社会の二極が進んでいるのだ。
これは「危ない状況」だと言える。コロナが大変だった時、みんな「闇の中」にいた。「この先には光がある」、「もう少し頑張ればコロナは終わる」と思い誰しも頑張った。政府も給付金や貸付金を出し対応した。5月にはコロナ感染症は「五類(感染症の分類・インフルエンザと同じ)」に引き下げられた。「闇は終わり光が戻った」かのように思えた。コロナの緊急施策として実施された給付金なども終了した。
だが、終わってはいない。炊き出しの長蛇の列は、いまだ闇の中に取り残された人々の存在を示している。「コロナが終わるまでの辛抱」と思いがんばった。コロナが終わっても闇が去らないと分かった時、人は何を頼りにがんばればいいのか。世間は光が戻ったかのように賑わっているが、自分はいまだ闇の中。コロナという期間限定が「無期限の闇」にとって代わる。「もう耐えられない」と思う人が出ても不思議ではない。ゆえに「危ない状況」なのだ。
コロナ禍で政府の緊急貸付の利用件数は382万件、貸付総額は1兆4千億円を超える。一月からは返済が始まった。最高200万円まで借りることができたが、その場合毎年20万円、10年にわたって返済することになる。住民税非課税世帯(単身年収100万円程度)は免除となるがこの基準は低過ぎる。もう少し手前で免除すべきだと思う。
ある県で貸付を受けた8,000人に対する訪問調査を行ったという。すでに13人が自殺していた。日本の自殺率(人口10万人単位の自殺者数)は17.5。上記13人を10万人で換算すると自殺率は160を超える。貸付金返済が自殺の要因であるとは断定できないが貸付金を受けた人が自殺ハイリスク層であることは間違いない。今後が心配である。
コロナという闇がようやく終わり光が戻ってきたように見えるが、いまだ闇の中を歩き続けている人がいる。そんな人々に「光は闇の中に輝く」(ヨハネ福音書1章)ことを伝えたい。「光」とは何か。「インマヌエル―共にいる神」である。経済的支援が必要であることはいうまでもない。だが「共にいる存在が救い」であるならば私たちにもできることがある。抱樸の炊き出しは、食事の提供のみならず「共にいる―あなたは独りではない」ことを闇におびえる人々に伝える営みだ。コロナよりも深い闇が迫ろうとも光はその中で輝いている。あきらめてはいけない。