2018/04/08
4/8 NHK視点論点「「無届け施設」が問うもの―札幌「そしあるハイム」火災を考える―」 その②
(3月20日にNHK視点論点にて話した内容を連載する。札幌の住宅火災事故に関しての番組 その②)
3、制度につながらない
では、なぜ、彼らは制度につながらなかったのでしょうか。
一つ目の理由は、多くの制度が「家族」や「縁者」を前提にしているという事です。困窮者の多くが家族と縁が切れています。こうなると、介護など、制度を利用する資格があったとしても、お世話をする人がおらず、制度と繋がらないという結果になります。
二つ目の理由は、制度の対象には入らないが、見守りや何等かの支援を必要とする人が存在するということです。その部分は、従来、家族が引き受けてきました。しかし、家族がいない、無縁状態の人が増える中、家族以外の受け皿、つまり社会が支える仕組みが必要になってきています。「そしあるハイム」のような「民間施設」は、それらの人を引き受けてきました。
4、施設ではない施設
今、「民間施設」と申しましたが「施設」という呼称には実は問題があります。当初、「自立支援施設が火災」という報道がありましたが、一般に「施設」は、法律に基づき、定義や基準に従って設置されます。「自立支援施設」に該当する法律や制度は、この国に存在しません。だから「自立支援施設」は通称に過ぎません。
また、高齢者が多かったので「有料老人ホームではないか」との意見も聴かれました。しかし、被害者の中には四〇代の方もおられ、就労支援を必要とする人もこの「施設」を利用していましたので、単純に「高齢者施設」とも言えません。
このような事実を考えると、「無届け施設」という指摘もまた、正確だとは言えません。「無届け」という言い方には、「本来届けを出さねばならなかった、にも拘わらず届けを出していない」という批判が含まれていますが、このような「幅広のニーズ」に応える制度がそもそも存在しないのですから、「届け出をしなかった」のではなく、「届ける先が無かった」のが現実です。だからと言って利用者を無理に既存の制度に当てはめてしまうと、利用者が限定され「幅広の働き」は出来なくなります。
5、今後どうすべきか
では、今回の火災を受けて私たちは、どうすべきでしょうか。三つの課題を考えたいと思います。
第一に「そしあるハイム」のような「間口の広い民間施設」に対する公的制度を整えることです。今、国がなすべきことは「規制」でもなく、また、無理やり既存の制度に押し込むことでもありません。そんなことをすると多様なニーズに対応できなくなります。「無届け施設」は全国に千カ所以上存在し、利用者は一万六千人以上と言われています。ニーズがあるにもかかわらず受け皿が無く、被害が相次ぐ状態を放置すれば、行政や国会の不作為と言われても仕方がありません。
つづく