2021/04/04
4/4巻頭言「孤独・孤立を防ぎ、不安に寄り添い、つながるための緊急フォーラム」
(2月12日政府は孤独担当大臣を置いた。それに伴い表記のフォーラムが開催された。以下は、その際に述べた意見。会議には首相、厚労、文科、国交、農水、環境、官房長官、そして、担当大臣が参加。民間からは子ども食堂の湯浅さんや自殺対策の清水さんなどが参加)
第一に「視点の問題」です。
私たちは、1988年に活動を開始しました。路上生活をする人々を支援していて気づいたのは、彼らの困窮が、「経済的困窮」のみならず「社会的孤立」にあるということです。私たちは、経済的困窮を「ハウスレス」、社会的孤立を「ホームレス」と呼んできました。この二つの困窮を同時に解消する。これが私たちの三三年間の活動の本質であり、「出会いから看取り」まで、「『ひとりにしない』という支援」、「家族機能の社会化」ということを基本的スタンスとしてきました。残念ながらこの路上の風景は、30年後、社会全体に広がったように思えます。
第二に「支援論の問題」です。
社会的孤立のリスクは、第一に「自分自身からの疎外(他者性を失うことで自己認知が成立しない)」、第二に「生きる意欲や働く意欲の低下(人は誰のために働くのかが重要)」、第三に「サポートとつながらない」ことで一層意欲が低下する、あるいは常に手遅れ状態となり社会コストも増大するということです。このような課題に対処するためには、これまでの「課題の解消を目指す『問題解決型支援』」に加え、「つながり続けることを目指す『伴走型支援』」という新しい支援論が必要となります。今後の地域共生社会を目指す上でこの二つは「両輪」として機能すると思います。私たちは、2010年以後、「伴走型支援士養成講座」を開講し、これまで1,000人以上が認定資格を取得しています。今春には「日本伴走型支援協会」を立ち上げ、「べてるの家」の向谷地生良さんと私が共同代表となります。
第三に「居住支援の問題」です。
社会参加や他者とのつながりの前提は「住居確保」だと思います。住居を失うと「生存的危機」、「社会的危機」、すなわち現住所や住民基本台帳がない状態では、あらゆる社会的手続きが不可能になります。さらに深刻なのは「つながりの危機」です。住居を失うことで社会参加や信頼構築が困難になります。社会的孤立問題の第一の課題は、住居喪失をいかにして防ぐのかだと言えます。
第四に「社会的孤立解消に向けての仕組みづくり」です。
第一に「孤立状態にある人とつながる仕組み」です。アウトリーチやSNS活用などでともかく「つながり」を構築します。第二に「つながった人」を受け止める相談の仕組みです。生活困窮者自立支援制度の「自立相談」をはじめ、既存の「相談事業所」などの活用が重要です。第三に「つなげる仕組み」です。支援計画に基づいて受け皿へとつなげます。第四に「支援者がつながる仕組み」です。行政のみならず民間も縦割り状態です。孤立解消のための広範なネットワークが必要です。第五に「地域づくりの仕組み」です。家族に丸投げするのではなく「家族機能の社会化」を担う地域、「孤立しない地域」を創ることです。 以上が私の意見です。