2024/10/13
10/13巻頭言「自立とはともだち100人つくること―第42回自立支援住宅入居式 理事長あいさつ」
理事長の奥田です。第42回自立支援住宅入居式を迎えました。入居をこころより歓迎申し上げます。「自立支援住宅」は2001年5月に始まりました。路上段階から伴走し、入居後自立の準備を共にします。今回入居されたAさんには3人のボランティアが半年間伴走します。
これが始まった頃、「好きで野宿をしている人を助ける必要はない」という意識が一般的でした。しかし、調査をしたところ97%の人が「野宿を止めたい」と答えました。「自立を求めている。好きでこんな生活をしているわけではない」との確信を得て「自立支援住宅」が始まりました。行政がシェルターを開設する3年前のことでした。この仕組みが公設民営の「ホームレス自立支援センター」を生むことになります。
名前に「自立」とありますが「自立」とは何かを考えてきました。僕の前におられる三好さんに聞いてみましょう。自立って何ですか。『わからんね』(三好)。そうね、難しいよね。じゃあ、横におられる佐々木さん。『自分で自分のことが出来ること』(佐々木)。確かに!じゃあ、自立には何が必要ですか。『お金と家かな』(佐々木)。確かに!お金も家も欠かせませんね。でも、お金と家があれば他は必要ありませんか。『ううう、家族かな』(佐々木)。僕もそうだと思います。でも、ここにおられる方の大半は「家族がいない」という人です。佐々木さん、こういう場合どうしましょうか。『ともだちをつくればいい』(佐々木)。仰る通り!人は、金と家だけでは生きていけない。家族や友達が必要です。なぜか?さびしいから。それもあります。
しかし、人生何が起こるかわかりません。みなさんはそれをよくよくご存じです。パチンコで大負けする。飲み過ぎて財布を落とす。ありますよね?『ハーイ』(大半の参加者)。そんな時、お金を貸してくれる人がいたらなんとかなります。それがともだちです。さらに大失敗すると家さえ無くします。そんな経験ありますよね。『ハーイ』(やはり大半)。いや、失敗でなくても火事や被災で無くすこともあります。そんな時、泊めてくれるのがともだちです。そうなると「金と家」ではなく「まず、ともだち」ということになります。
自立支援住宅入居で金と家の心配は無くなりました。しかし、それだけでは危ない。肝心なのは「ともだち」です。家族は少数精鋭です。すべてを3~4人で引き受けます。結果、家族が壊れてしまいます。だから、家族代わりにともだちをつくるとしたら多いに越したことはありません。例えば、お金を借りに行くにしても、ともだちが少数だと「また来やがった!」となります。しかし、ともだちが100人いたら「三千円貸して」とあなたが訪ねてきたとして、それが一週間に一回だとすると、ともだち100人ですから二年に一度ぐらいしか順番が来ません。二年も経つと忘れてくれるともだちもいるかも知れません。「まあ、いいか」ともう一度貸してくれる人もいるかも知れません。家族みたいに少数だとすぐに「絶交」されかねません。
これからの6カ月は「ともだち100人つくる」ことを目指します。それが抱樸でいう「自立」だと思います。どうぞ多くの方と楽しんでください。みんな家族です。改めまして入居を心から歓迎します。ようこそ抱樸へ。