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2024/12/22

12/22巻頭言「悲惨な事件を二度と繰り返さないために」

 12月14日北九州市小倉南区のファストフード店において中学生の男女二人が刃物で刺され15歳の女子生徒が死亡、男子生徒が重症を負った。驚き、悲しみ、怒りを覚えた。五日後、警察は近所に住む43歳の男性を逮捕。逮捕の知らせに「不安だったが安心した」という声が聴かれた。
 テレビでは連日事件に関する報道が続いている。どの局も元警察官が専門の立場から解説していた。犯人の逃走経路、使われた自動車、防犯カメラ、犯行時間、警察が逮捕に至った経緯などについて彼らは見解を述べていた。「なるほど」と頷く情報も少なくない。
 逮捕された容疑者について「ふだんから拡声機のようなものを使っていたので、なるべく接点をもたないようにしていました」「体格のよい四〇代くらいの人で、自宅から音楽を大きな音で流していました。数か月前から生活音が感じられなくなっていました。とても怖いです」「自宅前でたばこを吸う様子が見られました。以前は家族がいたようですが、最近は姿が見えませんでした」「夜中に大きな声を聞いたことがある。拡声機のようなもので反対側の家に向かって叫んで警察が何度も来ていて恐ろしかったです」との近隣住民の証言も紹介された。
 しかし、事件についての解説、あるいは検証は「警察の知見」だけでいいはずはない。特に住民の証言から容疑者に日常的な「問題行動」があったことは明らかだ。住民は彼に「恐れ」を抱いた。それが原因かは解らないが数か月前、妻子は家を出た。今日もテレビでは「心配なことがあれば警察に通報するように」との元警察官のコメントが紹介されていたが、相談先は警察だけではない。容疑者の「問題行動」が何に起因するのかは分からないが、福祉や医療が相談を受けられた可能性は否定できない。だが、そういう観点での報道はほとんどない。実際事件が起こっているのだから、事件後の対応は警察を担うのは当然だ。しかし、事件前に何か手を打つことが出来なかったのかについての検証は必要だと思う。
 家族が出て行ったこと。「問題行動」が住民を遠ざけたこと。それらは仕方無いことだったのかも知れない。ただ、事件直前の容疑者が孤立していたことも想像に難くない。「専門家」は警察だけではない。「通報を受けても問題行動が到着時点で治まっている場合対応できない」と元警察官もコメントしているが、そもそも警察にすべてを期待することは酷だと思う。
 一方、福祉や医療、行政、住民が総合的に対応を検討することは出来なかったのか。「解決」が容易ではないことは十分承知している。しかし抱樸の地元で起こった事件である。「私たちには何ができたか」と考えざるを得ない。さらに「警察が何とかしろ」と言い過ぎることで「予防拘禁(犯罪その他の触法行為の予防のために拘禁する刑事司法上の処分)」(治安維持法)の時代に戻る恐れもある。「福祉」に携わる人間として今回の事件をどう考えるのか。それが問われている。皆で考えたいと思う。

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