2023/09/17
9/17巻頭言「『希望のまち』はいよいよラストスパートです」
「希望のまちプロジェクト」がはじまって3年となりました。多くの方々に支えられ一歩一歩前進しております。改めまして心より感謝申し上げます。2023年9月6日「社会福祉法人抱樸」の設立認可をいただきました。今後、NPO法人と社会福祉法人が協働することで「ひとりも取り残されない社会」の実現を一層目指したいと思います。
これまで抱樸の働きは「ひとりの人」に集中してきたと言えます。「この人には何が必要か」、「この人には誰が必要か」。一人ひとりにあった支援を行ってきました。困窮者支援においては「自立支援」や「社会復帰」が課題となります。その中で私たちは「自立とはなにか」「社会とはなにか」を常に問われてきました。
「自立できた」としても「自立が孤立に終わる」のでは意味がありません。自立とは独りで生きていくことではなく多くの人と出会い、相互に頼り合い、共に生きることだと考えています。
「社会復帰」にしても「そもそも復帰したい社会か」が問われました。社会のひずみ、貧困格差、孤立化、自己責任偏重などが、「困窮者」や「生きづらさ」を生み出しているのなら個々人に対する支援と共にどのような社会を創造するのかが問われてきました。
2019年、長年にわたり行われた特定危険暴力団工藤会壊滅作戦の結果、本部事務所が解体撤去されました。抱樸では、その跡地を引き受けることを決断しました。「怖いまち」と言われてきた北九州市を「希望のまち」へと変えよう。それが「希望のまちプロジェクト」でした。土地代は「九州ろうきん」よりお借りしました。その後多くの皆さんの寄付をもって2022年3月に完済することができました。2022年4月より、建築のための寄付が始まり、さらに多くの方々のご協力をいただきました。
今回は「まちづくり」です。困った時の相談場所であることは当然ですが、何よりも日常を共に生きる場所にしたい。そこには「居場所」があり「出番」がある。「助けてと言える場所」であり、「助けてと言われる場所」でもある。今後単身化が進む中、まちを大きな家族にしたいと思います。「身内に頼る(身内しか頼れない)」という意識が強い日本社会において「家族だから~するのは当然だ」と考える人は少なくありません。しかし、肝心の家族がいない、あるいは力がない。そんな現実が広がっています。
希望のまちでは、「まち全体で家族の機能」を果します。お父さんが10人いてもいいし、お母さんが20人いてもいい。お兄ちゃんもお姉ちゃんも多い方がいい。用がなくても一緒に居られる。何気ない時間を共に過ごす。日常を支え合い、お互いが相談に乗り、困ったら知恵を出し合い助け合う。これまで「家族」によって担われてきた日常をより多くの人々、つまり「赤の他人」で創りたいと思います。
希望のまちは、少子化、人口減少、さらに単身化が進む日本社会においてこれからの「地域共生社会」のモデルとなる。それが「希望のまち」です。これは大きな実験でもあります。
多くの方々の参加とご支援をお待ちしております。